大まかに申しますと、舞台で役者さんが身に付けている物(かつら、衣装など)と手にする物(小道具など)以外は全て大道具の担当です。家具から床、壁、屋根、外の風景まで、大道具は舞台の設定その物を用意する仕事と言っていいでしょう。ですからいい加減な物やいたずらに目立ちすぎる物を作って、お客さんが舞台に集中する邪魔をしてはいけません。
「うまくいって当たり前の心で、陰で舞台を支える仕事」それが大道具なのです。
私はよく皆さんに「随分珍しい仕事をしてるね」と、まるでイリオモテヤマネコでも発見したかの様に言われます。大道具屋なんて東京でも滅多に出会わないと思われる職業なのに、ましてやここは群馬です。正直、自分でも「社会の片隅にひっそりと棲息する珍獣の類」だと感じる時があります。特に「黒衣(くろこ)」と言う、江戸時代から受け継がれた裏方専用の忍者みたいなユニフォームを来たままコンビニなどに買い物に行き、周囲から好奇の視線を浴びた時など、つくづくそう思ってしまいます。

ではこれから実際に「私達がどんな仕事をしているのか?」ヤマト舞台で普段使っている大道具をいくつか例にとって、ご説明して参りましょう。
■所作台(しょさだい)
日本舞踊などを舞う時に用いる、檜板を上に貼った長方形(通常 幅3尺、長さ12尺、高さ4寸)の台です。
この台を使うと足のすべりがよく、裏側にちょうど角が当たる形で当て木が通っているので、踏み降ろして「トントン」と足拍子の音を響かせる事が出来ます。
これを何十枚と敷き詰め、舞台を作ります。よく言われる「檜舞台」とはこの事から来ています。
ちなみに所作台の上は決して土足や裸足で乗ってはいけません。必ず足袋を履いて上がらなければいけません。どうしてかと言うと、汚れるからだとか、足の油がつくからとか、高いから(一枚ン十万円)だとか諸説色々ありますが、要は「そう言う決まり」だからです。もし土足で乗っている所を見つかったら、相手がたとえブッシュ大統領であろうと(そんな場面はまず無いと思いますが)、普段は非常に温厚な人も含め、舞台関係者全員からもれなく「早く降りろ!バカヤロー」と乱暴な言葉を浴びせられる事は必至です。お気をつけください。

■平台(ひらだい)
主に舞台をかさ上げしたい時(屋台の土台や、ひな壇など)に用いる台です。大きさは6×6(ロクロク:縦6尺、横6尺、高さ4寸 )、4×6(ヨンロク:縦4尺、横6尺、高さ4寸)、3×6(サブロク縦3尺、横6尺、高さ4寸)など様々な物があります。これに 開き足 や 箱足などを用いて簡単に 常高 (1尺4寸)、 中高 (2尺1寸)、 高足 (2尺8寸)などの高さの台を作ります。
大道具はこの平台を担いで右往左往する事がしばしばです。平台には一応裏に担ぐ為の棒が通っていますが、これが結構重労働です。中にはロクロクを平然と二枚担ぐ屈強な人(野獣?)もいますが、当然私はそんな事は出来ませんし、したくもありません。

(1尺は約 30.3 センチ、1寸は 3.03 センチ 1尺=10寸)
