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■ヨタ話 

 大道具屋と言う仕事は、忙しい時は非常に忙しいのですが、暇な時はとにかく暇です。
 なぜかと言うと、昔からよく「晴れの舞台」とか言われてますが、舞台公演は「晴れの~」と言う形容詞が示す通り、特別な日であり、そんなにしょっちゅう行われるものではなく、その滅多にない舞台公演と供にある大道具屋の仕事も、色々なお客さんから注文を受けたとしても、当然年がら年中あるわけではなく、普段はとってもとっても暇を持て余している、と言う訳です。
 なんだかひどく回りくどい説明になってしまいましたが、要するに大道具屋はあんまり忙しくないって事です。
 それで人間、この忙しくない状態に長い間身を置いていると、それが当たり前になり、知らないうちに勤労意欲を失い、地道とは言い難い人生を送ってしまいがちになります。
 事実この私もいい年こいて結婚もしてませんし、今までボーナスと言う物を手にした経験すらありません。つい最近までナスに棒を刺した物だと思ってました(嘘です)。
 そんなの大道具屋のせいじゃなくて、初めから人間として問題があるからだと言う声がごく近くから聞こえてきそうですが、そんな事を言う連中にしても私とそんなに大差はないと思います。
 だいたい親方からして仕事場にあるのは、どう考えても大道具作りに関係のない木工旋盤とか、「ターミネーター」と言う映画でシュワルッツェネッガーが押しつぶされた様な訳の分からない大型のプレスだとか、その他諸々、もう一度言いますが、仕事をしなければいけない場所には大道具作りに全く必要のない趣味の工作機械、言い換えれば「大人のおもちゃ」の類が埋め尽くしているのです。
 内緒ですが、あれは絶対かみさんには「大道具作りにどうしても必要だ」とか何とか言って買ったに違いありません。
 もう誰が大道具屋を「まともな社会人」と呼べましょうか?いいえ…、呼べる訳がありません。
 で…、こう言う人たちが集まると決まって始まるのが「ヨタ話」です。
 ここでその愚にも付かないどうしようもない会話の一例を、ご紹介しておきましょう。

 それはある晴れた暑い日、倉庫で大道具の出し入れをしていた時の事です。
 以前から雨漏りをしていた倉庫の屋根を屋根屋が修理に来ていました。それをぼんやり眺めていた一人が、ふと口にしたのです。
「田へ(たい)したもんだよ蛙のションベン、見上げたもんだよ屋根屋のふんどし…か」
 ご存知「寅さん」の口上ですが、こう言うどうでもいい戯言に限って、必ず食いついて来る暇人がいます。
「ふんどし?…、屋根屋ってのは、昔はふんどし一丁で仕事をしたのかな?」
「う~ん、屋根の上は暑いからねえ」
 そこへ何となく聞き耳を立てていた第三の暇人が割り込んで来ました。
「そりゃそうだ。俺も昔、屋根の上を裸足で歩いてて火傷しそうになったよ」
 更にそれにつっこみを入れる暇人その四。
「何で屋根の上なんか裸足で歩いてたんだい?ははあ、泥棒でもしてたな?お前」
「馬鹿言うな、泥棒ってのは土足で上がるんだよ。屋根も座敷も所構わず…」
「じゃ間男か。旦那に見つかって裸足で逃げたな」
「そうじゃねえよ。隣の女子高生を覗いてて…って。違うわっ!布団を干してたのっ!」
「なんだ、つまらねえ理由」
「でもあんな高い所に登ってちゃ、屋根屋はトイレに行くのもたいへんだろうね」
「そんなもん、いちいち下りて来るもんかいっ!」
 出ました!ついに暇人の中の暇人、暇人師匠、暇人大王…、親方までもが参入です。
「雨といにするんだよ!雨といに。そのためについてるんじゃねえか、あんな便利なもんが」
「じゃあ何ですか?雨といってのは屋根屋の用足しの為に付いてたんですか?知りませんでしたー」
「田へしたもんだよ蛙のションベン!といしたもんだよ屋根屋もションベン…だよっ!」
「それを俺達が間抜け面で、見上げたもんだよ屋根屋のションベン…ですね」
「そりゃ結構毛だらけ、猫も抜け毛でそこらじゅ毛だらけ!!」

                         いかがです?…実に実りのない不毛な会話でしょ?

ピロッとしたやつが後ろ前

 

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